調査企画

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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入学直後に決まる教育効果

 因子別に、力の付き方を検証する。
 「異文化コミュニケーション力」では、「学業充実群」の割合が高く、「大学エンジョイ群」でも、ある程度は身に付いていることが分かる。最も低いのは「入学後失望群」であり、大学での外国語学習に全く興味を示していないことがうかがえる。
 この「異文化コミュニケーション力」とほぼ同じグラフを描いているのが、「大学学習効果」である。「異文化コミュニケーション力」の育成には外国語教育が不可欠であることを考えると、「大学学習効果」と同じ傾向が見られるのも当然だろう。
 これら2つのグラフから、初年次教育の重要性がうかがえる。
 「学生を最初に失望させないことが肝心。特に、学習面での失望は取り返しがつかない可能性がある。『不本意入学後奮起群』にも、成績上位層が一定割合で含まれているはずだが、大学学習効果は非常に低い。第1志望であることは、大学での活躍を促す重要な要素であるようだ」と、木村助教は指摘する。
 木村助教が興味深い点としているのは、「対人関係構築力」が「異文化コミュニケーション力」「大学学習効果」と同じ様相を見せていること。「大学では、教員やほかの学生とコミュニケーションを取りながら学習を進めるためではないか」と話す。
 「大学エンジョイ群」の高偏差値者の層の帰属確率に伸びがないことから考えると、「対人関係構築力」だけが身に付くのではなく、ほかの力と一緒に伸びると考えられる。

不本意入学者に多い消極的な学生

 「社会問題関心」は、「学業充実群」以外は、どの学生群も同様に低い。「大学エンジョイ群」に至っては、高偏差値層における帰属確率が極端に減っている。学業が充実していないと、学生の社会問題に対する関心が全般的に低いのかもしれないという問題点が浮かび上がる。
 「課題提出」に関しては、「学業充実群」が最も高く、「大学エンジョイ群」にも課題提出に積極的な層がある。「積極的ではない層も同程度、存在するのが特徴。学習をそつなくこなすタイプだろう」と、木村助教は分析する。
 注目したいのは、「不本意入学後奮起群」と「不本意入学後諦め群」に、課題提出に消極的な学生がかなりの割合で存在すること。「不本意入学後奮起群」には成績上位層も含まれているだけに、積極的な学習に導くような働き掛けが必要かもしれない。

積極的な態度が学業と関係

 「社会貢献」に対する意識が最も高いのは「学業充実群」で、「大学エンジョイ群」がそれに続く。逆に意識が低いのは、「入学後失望群」「不本意入学後諦め群」である。
 「大学が『学生の社会化』を阻害する要因となっては、本末転倒である。入学後にどれだけ学生の期待に応えられるか、不本意入学者に対しても将来に希望を持たせ、いかに大学生活をあきらめさせないかが、大学の役割として求められているのかもしれない」と、木村助教は考える。
 「積極参加」を見ると、学業以外のさまざまな活動に積極的に参加する態度が身に付いているかどうかが分かる。「大学エンジョイ群」は平均的に高めだが、中程度以上の積極性を持つ層の割合は低い。「大学エンジョイ群」は積極的に大学生活を楽しむイメージがあるが、学業が充実していることと、本当の意味での積極性を持つことには関係性があると考えた方がよいのではないか。

満足度も5つの学生群と関係

 図示はしていないが、「授業に対する満足」「大学提供サービスへの満足」「設備に対する満足」の3つの因子についての分析を紹介する。
 いずれの因子においても、「大学エンジョイ群」「学業充実群」の満足している割合が高い。逆に、「不本意入学後奮起群」「入学後失望群」は、いずれの因子も満足度が低い。さらに、「不本意入学後諦め群」は、層による大きな違いは見られない。従って、「不本意入学後奮起群」「入学後失望群」の満足度をいかに上げるかが、大学の評価を左右するといえる。


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