測定や評価は、短時間で無駄な労力をかけずに行うのが良いとされる。これは「テスト」の発想にも通じる。測定や評価それ自体は、手段に過ぎないからだ。「学士力」の測定が目的ではなく、学生のために教育環境を充実させることが本来の目的であり、根幹のはずである。目的と手段を逆転させてはならない。
国立大学では、法人化以後、本来、研究・教育に向かうべき人材が多数、大学業務に多くの時間を割くようになった。「学士力」という新たな概念の創出によって、人的資源が限られた大学内での際限なき業務増加は避けるべきだ。適正規模に縮小させる勇気が必要で、そのためには思い切ったアウトソーシングの選択でも十分に事足りてしまう。
その意味において、JCSSのように国際水準で調査項目が安定し、分析体制も整う全国規模の大学生調査に参加する意義は計り知れない。例えば、潜在クラス分析で得られた帰属確率を用いれば、どの入学者選抜方法で、どの学生群がどの程度の割合で入学したかという分析が可能であり、追跡調査の機能も利用できる。各学生群の「学士力」の付き方を大学間で比較することも可能である。
今回の調査では、各学生群の割合も、各学生群が身に付けている力の程度も、大学ごとに違うことを確認した。どの学生群の教育に成功または失敗したのかという大学ごとの特徴を、この調査から把握できる。こうしたデータを基に、本来めざすべき「学士課程教育の構築」につながる具体的な施策を考える方が、まだ建設的だと考える。
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