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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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同窓会を母体に NPO法人を設立

 大谷大学の同窓会が社会貢献を明確に打ち出したのは、2006年頃のことだ。2003年、活動の活性化を図るため、同窓会の諮問機関「同窓会活動企画推進委員会」を発足させ、課題の検討を開始した。議論の過程で浮き彫りとなったのが、「そもそも大谷大学の同窓会は何のために存在しているのか」という問題意識だった。
 「同窓会は大学の特別なイベントのときは張り切るが、日常的に何ができるかというと、意外にはっきりしていなかった。大学に貢献するだけではなく、『大学を通して社会に貢献する同窓会』をめざすことにより、活動が活性化し、結果的に大学のプレゼンスを高められるのではないかと考えた」と織田教授は語る。
 その目的を達成するため、2006年に設立されたのがNPO法人「尋源舎」だ。市民や学生などを対象に、生涯学習講座、講演などの社会教育活動を推進する。同窓会はあくまで任意団体であり、銀行口座一つにしても、大学の事務局長など個人の名義でなければ開設できない。同窓会が事業主体として独自の活動を行うには、法人格を持つ組織をつくる必要があった。尋源舎はこれまで、毎年秋の「尋源仏教塾」、毎月隔週2回の「仏教入門講座」などを開講してきた。
 今年は、「八十講」のうち4支部で、尋源舎と同窓会支部の共催による「仏教公開セミナー」という形式で開催された。支部が主催する講演は、支部にとって開催しやすい会場が選ばれることが多く、必ずしも市民が足を運びやすい場所で開かれるとは限らない。しかし、仏教公開セミナーは、尋源舎と支部が共同して、市民の参加が見込める会場の設定、および必要な資金援助を行う。共同開催した会場では、市民の参加が多く、他の支部から尋源舎との共催希望が増えているという。
 「八十講」は、教員の意識啓発の面でも大きな意味がある。現在、教員の3分の2は大谷大学以外の出身者で、同窓の教員と違って大学への帰属意識が強い人ばかりではない。全国の同窓会支部と交流し、各地の隅々まで大谷大学の名前が浸透していることを知らせ、教員の誇りや帰属意識を醸成することもねらいの一つ。統一テーマとして「日常と学問をつなぐ」を掲げたのも、各教員に社会貢献の視点から自分の専門を見直してもらいたいと考えたからだ。


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