特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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徐々に指導を緩めるが完全には手を離さない

 あらゆる場面に自立に向かう仕掛けを組み込み、主体的な学習者の育成を目指す倉吉東高校。では、同校の教師はどのような場面で、生徒の自立を感じ取るのだろうか。進路部主任の川本祐子先生は「自立した生徒は授業中の表情や目付きだけではなく、答案の名前の書き方も変わってきます。自信が芽生えて、自分を見てほしいという思いが高まっているのでしょう」と述べる。
 質問の「質」も変わってくる。「これまでは漠然と『わかりません』と言っていた生徒が、『ここがわかりません』『自分はこう思いますが、先生はどうでしょうか』といった具合に、質問の内容もより具体的になります」と藤原先生は指摘する。
 生徒同士が学び合い、励まし合う姿も見られるようになるという。学年を追うごとに、休憩時間にホワイトボードを使って教え合う生徒、学年集会で「受験に向けて気を引き締めよう」と呼びかける生徒が増えていくという。「自分だけが合格すればよいという自己中心的な考えから脱して、皆で高め合い、共に合格を勝ち取ろうとする意識が生まれています」と川本先生は分析する。
写真
写真 「国際高校生フォーラム」の校内予選に向けた準備の様子。このフォーラムでは毎年、国内外の進学校を招いて現代社会の諸問題について意見を交わす。各校の代表チームが出場し、ほかの生徒は裏方に回って汗を流す。運営を通して生徒同士が互いに認め合うことが、一人ひとりの自信につながる
 そんな同校の教師も「手を離すタイミング」については難しいという。
 「生徒への指導は、授業の雰囲気や生徒の言葉遣いなどを見ながら徐々に緩めますが、それでも完全に手を離すことはありません」(米村先生)
 「学習習慣が身に付いていない生徒には、3年生でも家庭学習調査を行い、学習状況をチェックする必要があるでしょう」(三谷先生)
 確かなことは、教師が少しでも手を抜いたり気を抜いたりすると、その影響はすぐに生徒に表れるということだ。「学年間・クラス間の差が生まれないよう、何よりも教師自身が個々の力量を高め、しっかりと同じ方向を向いて指導することが大切です」と名越校長は強調する。
 「倉吉東高のかたち」はあくまで教育の枠組み。そこに魂を吹き込むのは、教師一人ひとりの強い意志と不断の努力にほかならないのである。

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