指導変革の軌跡 兵庫県立夢前高校
VIEW21[高校版] 新しい組織的な生徒指導による学校改革のパートナー
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「生徒のことを思っているのか!」 担任への一喝が生徒の心を溶かす

 同校は組織的な改革へと大きく舵を切った。柱の一つは生徒指導の徹底だ。基本方針は「不寛容とチャンス」。毎日の指導では規則を厳格にし、例外を認めない厳しい態度で臨むが、最後はチャンスを与えて反省を促すという方法だ。
 実際、ある生徒が退学もやむを得ないような問題行動を起こした。原校長はその生徒に反省の色を見て、もう一度チャンスを与えた。生徒指導副部長だった藤井生也先生は、生徒、保護者、そして学校の三者が納得できる対処法がいかに大切か、この一件で気付かされたと話す。
 「その生徒は再び問題行動を起こし、自ら進路変更を申し出ました。校長からいただいたチャンスを生かせずに申し訳ないという思いでいっぱいだったと思います。その生徒が最初に問題を起こした時、これは学校の決まりだからと進路変更を迫っていたら、生徒も保護者も学校に対して大きな不信感を持ったと思います。私が前任校で生徒指導を担当していた時、本校で教わったノウハウを基に生徒指導ができていたら、もっと大勢の生徒を生き生きと輝かせられたのではないかという気持ちでいっぱいです。この件で、生徒・保護者と学校双方が納得の上で問題に対処するにはどうすればよいのかを改めて学びました
 ある日、こんなことがあった。当時2年生担任の島村美奈子先生が、朝、校門で服装指導をしていたところ、女子生徒が靴のかかとを踏みつぶして登校した。「去年までは何も言われなかったのに」と、服装指導に反発していた生徒だ。島村先生は注意したが、女子生徒は生返事をしながらそのまま通り過ぎてしまった。
 その様子を見て烈火のごとく怒ったのが、原校長だ。その女子生徒に対してではない。生徒を素通りさせた島村先生に対してである。
 「直ってないじゃないか、あなたは本当に生徒のことを思っているのか!」
 島村先生はその時のことをこう振り返る。
 「周りにいた生徒全員が立ち止まるほどの剣幕で怒鳴られました。私はその場でうつむき、校長の言葉を聞くしかありませんでした。恥ずかしい気持ちを抱えながら教室に入ったのですが、生徒の様子を見て驚きました。いつもは全員が座るまで5分はかかるのに、既に全員が座っていたのです。そればかりか、さっき注意された女子生徒が『ごめんなさい』と頭を下げたのです。それまで自分中心にしか物事を見られなかった生徒でしたが、私が校長に怒られている姿を見て、彼女なりに教師の立場に思いをめぐらせたのでしょう

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