震災をバネにする石巻、
街そのものが大きな学校へ

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 石巻という街そのものが、何よりも学校だ

石巻STAND UP WEEKで訪れた2泊3日の滞在中だけでも、大勢の高校生たちが活躍する姿を見られた。一方、石巻を訪れる大人も元気だ。「復興BAR」で聞いた話によると、世界最大手のIT企業のCMなどをつくっているコピーライターも街の常連だという。彼は、この街で開催されるさまざまなイベントや新たにできるお店の名前を命名するほか、高校生向けにコピーライティングの極意を教えるワークショップを開き、高校生たちにイベントやお店の名前をつけさせたこともあるという。

石巻STAND UP WEEKでは、今回取材したイベント以外にも、アートや音楽、不動産/建築、漫画/アニメ、食、自然体験などさまざまなイベントが多数開催されていた。おそらく、これらのイベントでも活躍している若者たちが大勢いただろう。全国広しといえども、各界の第一線で活躍する大人たちの仕事ぶりを、学生たちが間近で見て、彼らに教えられ、任され、一緒にコトを起こせる街は石巻を除いてなかなかないはずだ。

この「未来作りの見本市」は、各界の第一線で活躍する大人にとっても価値がある。会社では発揮できない自分の能力を生かして地域社会のために腕を振るうことができ、その姿に喜ぶ人々を間近で見ることができる。さらには、自分たちの技術を間近で学ぶ次世代の子どもたちを育てることもできるのだ。そういうステキな循環は、彼らが何度も石巻を訪れるモチベーションにつながっているのではないだろうか。

2011年3月11日の地震とそれにともなう津波は、一度はこの街から夢も希望も奪ってしまったが、今、この街には一番ステキな「未来への循環」が育まれつつある。さらには、同じ石巻市内の雄勝町なども含め、「石巻」という場所そのものが、次世代の日本人を育てる学校になろうとしている。

この学校には教室もなければ教科書もない。しかし、社会に進出した時にやがて必要とされる「主体的に行動する力」や「地域との結びつき」を学ぶにあたって、これ以上の学校はなかなかないはずだ。

【JR石巻駅の外観の一部】

 

 

 

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
林 信行(はやし のぶゆき)
ジャーナリスト
最新テクノロジーは21世紀の暮らしにどのような変化をもたらすかを取材し、伝えるITジャーナリスト。
国内のテレビや雑誌、ネットのニュースに加えて、米英仏韓などのメディアを通して日本のテクノロジートレンドを紹介。
また、コンサルタントとして、これからの時代にふさわしいモノづくりをさまざまな企業と一緒に考える取り組みも。
ちなみに、スティーブ・ジョブズが生前、アップルの新製品を世に出す前に世界中で5人だけ呼んでいたジャーナリストの1人。
ifs未来研究所所員。JDPデザインアンバサダー。

 

主な著書は「ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した」、「グーグルの進化」(青春出版)、「iPadショック」(日経BP)、「iPhoneとツイッターは、なぜ成功したのか?」(アスペクト刊)など多数。
ブログ: http://nobi.com
LinkedIn: http://www.linkedin.com/in/nobihaya

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