特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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PDCAサイクルによる教学改善の実行

 3つ目の課題は、教学改善を継続的に行うための「PDCAサイクル」を大学内部にしくみとして整備することである。
  このための取り組みとして、すでに多くの大学が、全学・学部レベルでの自己点検・評価を実施している。しかしその結果は、しっかりと教育の改善に結びついているのだろうか。「学部長調査」では、学部が取り組む自己点検・評価の目的を教育活動の改善と強く意識する一方で、実際の達成度合いは「認証評価の準備」が最も高かった(22ページ参照)。大学関係者からは「大がかりな評価は行ったものの教育現場に何のフィードバックもない」という声も実際に聞かれる。
  こうした状況を克服する努力として、以下の2つを提起しておきたい。1つは、今後、評価結果をFDやSD、あるいは教職協働の取り組みなどに反映し、次の戦略策定と教育実践に有効に結びつけていくことである。つまりCheckからAction、Plan への実質的な道筋をつける努力が重要となる。
  2つ目は、教学改善を客観的な根拠に基づいて行うためのIR(Institutional Research)である。学部長調査によれば、学部長の8割近くがIRを必要と回答しており、全体として関心が高まっているといえる。また、その必要性を強く認識する大学では、特に「入学者の学力レベル」「出席状況や退学」「成績・GPA」「学生が習得した能力(学習成果)」「就職状況」等の情報ニーズが高かった。
  ここからは、最終的に企業社会との接続まで視野に入れた「成果をめざした学習プロセス管理」への意識の高まりが推測される。
  今後、大学の機能別分化が進むにつれ、職業人育成のための役割を明確化する大学の割合は、私立大学を中心に高まると推測される。そのような大学にとって、IRを戦略的に整備し、確実に学習の成果を管理する態勢を構築することが競争力強化の基盤となる。それに気づいた一部の大学はすでに動き出している。


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