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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学部系統別志願状況

 国公立大学と私立大学の学部系統別に志願状況をまとめた図表3によると、総じて、2009年度入試と同様に「文低理高」の状況が続いている。
 私立大学では、2009年度の模擬試験における志望動向と同様に、「看護・医療技術学(124)」系統が人気。「理学(107)」「理工・工学(105)」は、単科大学や地方大学においても志願者増の大学がめだつ。「農・生命科学(107)」系統は、模試の段階から1年間を通じて志願者が増加していたが、センター試験の自己採点結果をふまえ、センター試験での高得点率が要求される国公立大学の農学系統を避ける受験生も見られた。
 「歯学(93)」「薬学(92)」の志願者減少傾向は、模試の志望状況がそのまま継続している。文系の「法・政治学(102)」系統では、近年、志願者の動きは低調な傾向にあったが、中堅校を中心に志願者増の大学が多く、全体で見ても3年ぶりに志願者が増加した。「法科大学院→司法試験合格」という目標設定ではなく、就職難を反映して公務員試験合格をめざす受験生の志向が推測される。
 一方、2009年度に続き、「経済・経営・商学(99)」系統は志願者減となっている。中には、経済学部(学科)は不人気、経営学部(学科)は好調と、明暗が分かれた大学もある。不況のときは、より実学的なイメージの強い経営学部系統に人気が集まりやすいといわれるが、学科間の難易差もあり、首都圏の中堅私立大学でこの傾向が顕著である。
 「教員養成・教育学(122)」系統は、大きな増加に転じている。不況の影響から就職を意識し、小学校教員・幼稚園教員をめざす女子受験生の積極的な出願がうかがえる。特に、近年新増設された大学・学部で可能な「保育士・幼稚園教諭」「幼稚園教諭 ・小学校教諭」の免許・資格同時取得が魅力になっていると思われる。

図表3:学部系統別志願状況

 2010年度入試における傾向として2つの点が挙げられる。1点目は、2009年度に引き続き地元志向が強いことである。これは、複数の進学校の教員からのヒアリングでも確認できた。例年、他地域からの志願者が少ない中国・四国と東海・北陸で志願者数の伸びが大きいことからも、地元志向の高まりが類推できる。これらの地域で、地元国公立大学およびそれらと併願関係の強い地元私立大学の志願者数が伸びていることも、根拠として挙げられる。
 2点目は、「安全志向」である。2010年度はセンター試験の平均点が低かったにもかかわらず、センター試験利用B方式、つまり出願締め切り日をセンター試験実施日以降に設定する選抜方式でも、志願者が増えている。一般的に、得点が伸び悩んだ受験生の多くは、ワンランク下げて出願する。首都圏のセンター試験利用B方式の志願者数の対前年指数を見ると、早稲田大学で82、慶應義塾大学でも92と減少している。一方で、15ページの図表1で示したセンター試験利用B方式全体の志願者増は、自己採点集計による合格可能性を見極めたうえで、安全校を選択しているためと推測される。


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