ビッグデータを活用した教育研究の取り組み

学校との共同研究

■ 2016年度 その2

●学習記録から指導改善への取り組みを開始しました。(2017.2.21)

 タブレット教材から得られる生徒の学習記録。取り組みにかかった時間や、正解できたのか、解き直しをしているのかなど、一人ひとりの学習状況がわかるデータを取得することができます。これを上手に生かして生徒の理解を高めたり、先生の指導改善に活かせないか。そのような思いから、生徒一人ひとりのタブレットの学習状況を見える化した、「週間学習記録表」を作成しました。(資料1)


▼資料1:週間学習記録表

※図をクリックすると拡大します


 この「週間学習記録表」は、期間を区切って、取り組んだ生徒(行)ごとに、取り組んだ問題の結果(列)を一覧表にしたものです。StudentのSとProblemのPをとった「S-P表」をもとにしています。行を見ると、その生徒が、各問題に正答できたのか、全体の正答率はどれぐらいだったのかがわかります。列を見ると、その問題を、誰が正解できたのか、クラス全体でどれくらいの正答率だったかがわかります。これにより、生徒個々の課題を発見するとともに、その課題はクラス全体のことなのかを分析して、指導に活かすことができます。


 ① 検証のサイクルを作る

 今回は、藍川中学校の吉岡先生・尾本先生・牧谷先生から提案をいただいて、以下の流れで、1週間のサイクルを組んでみました。教科は数学です。

○ある週の数学の時間に、ある学習内容の数学の授業を行う

○先生が、その学習内容の復習になる部分の教材を、翌週までの課題(宿題)として指示

○生徒たちは、自分の時間・ペースで、該当教材に、取り組む

○月曜日に、該当の学習内容の学習記録を抽出し、「週間学習記録表」を作成して、担当の先生に送付

○先生が、「週間学習記録表」をみて、結果を分析、改善課題を抽出

○次の授業で、先生が生徒にフィードバック

 

 ② 見えていなかったことが見えた

 まず、この表を見た先生から、「ID○番の生徒は、満点をとれるよくできる生徒と思っていたけど、この記録を見ると、ちょこちょこ間違いながら学習して、やり直しているね。努力している成果とわかってびっくりした。」と


 ③ 生徒が感じる「安心感」と「緊張感」

 先生は、次の週の授業の時にこの「週間学習記録表」を誰の結果かを分からないようにして拡大印刷して黒板に貼ったそうです。そして、データを見ながら、「みんな、よく頑張っていることがわかるよ」「とくに○○さんは、時間がかかっているようだけど、頑張って解いているね」「○○くんは、最初は間違っていたみたいだけど頑張って解きなおして最後までいったね」と、学習の行動・プロセスをほめ、ほめられた生徒はうれしそうだったとのこと。
 今までは、宿題をやったかどうかの結果の確認で終わりがちだったのが、学習のプロセスが可視化され、「生徒をほめる材料」が増えましたと先生。生徒には、結果だけではなくプロセスもしっかり見ているという安心感をもたせることができます。同時に、プロセスをフィードバックできるということは、「先生は、ちゃんとここまで見てるよ」という緊張感にもつながります。


 ④ 先生自身の指導改善につながります

 先生は、この「週間学習記録表」は、自分の授業改善につながるとおっしゃいます。たとえば、問題ごとの平均正答率をみていくと、問3と問4が低いことがわかります。いい加減に答えているのではないことは、解答にかかっている時間を見るとわかります。
 問題内容を確認すると、「合同条件を答える問題で、三角形の合同条件と直角三角形の合同条件を混乱しているんですよ」。
 また、別のもう1問に関しては「証明問題の仮定と結論を、文章で答えることはできるのに、記号を使って式で表すことができてない。次の授業でフォローしなければいけないですね」。
 このように、クラスの全体の課題を見つけ、授業改善につなげることができます。


 ⑤ 先生の負荷を減らしつつ、指導改善に役立つサイクルを

 この「週間学習記録表」は、分析に負荷がかかると活用しにくくなってしまいます。先生方と相談して、先生の分析の負荷を減らし、見た目重視で、雨雲ズームレーダーのように課題が浮き上がってみえる表に改善しました。問題ごとの正答率については、その比率に応じて、緑・黄・赤 と色分けします。「赤い」ところがアラームです。(図A)さらに初回は間違えた問題にはブルー、解きなおして正答できたものには、ピンク色をつけることにしました。「ブルー」のままだとアラームです。(図B)
 引き続き、この「週間学習記録表」を運用して、さらに生徒の成果向上や指導改善につながるようにしていければと考えています。(中垣 眞紀)

 

▼図A:改善した「週間学習記録表」

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▼図B:解き直したプロセスを確認

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●タブレット活用状況を約250名の全生徒へお返ししました。(2017.1.13)

 タブレット教材から得られる生徒一人ひとりの学習記録。これを上手に生かして生徒のやる気や学力を高められないだろうか。そのような思いから、生徒一人ひとりのタブレット活用状況をまとめた「1か月の学習記録」を作成しました。(資料1

 生徒のやる気や学力を高めるために必要なのは、テスト得点など、単に結果としての学力や能力を認識させ認めてあげることではありません。むしろ、努力したプロセスを認識させ認めてあげることが重要であることが、様々な研究から分かっています(例えば、中室(2015)『「学力」の経済学』)。そのような考え方をもとに、以下の2点を生徒へのフィードバックのポイントとしました。


 ① 学習の量(取り組みレッスン数)を可視化

 もっともわかりやすい努力を表す指標は「学習の量」です。一般には、学習時間や取り組み問題数などが思いつきますが、ここでは両者と密接に関連する「レッスン数」(資料2)を取り上げ、各教科どのくらい取り組んだか、学校平均と比べてどうだったかを示しました。取り組み上位者には「がんばりマーク」をつけ、学習の励みになるようにしました。


 ② 学習の質(一度間違えた問題の解き直し、学習の頻度)も可視化

 学力を上げるには、学習の量だけでなく学習の質も重要だということが明らかになっています(ベネッセ教育総合研究所(2014)『小中学生の学びに関する実態調査報告書』)。その中でもとりわけ、できなかった問題を解き直す振り返り学習が重要であることがわかっています。タブレットの学習記録からは、単に取り組んだ問題数だけではなく、「一度間違えた問題を再び解き直して正解にたどりついたか」という学習のプロセスもわかります。これにより、「最初は×だった問題を○にした努力」を生徒がどれだけしたかがわかるようにしました。


上の2点に加えて、3つめのポイントがあります。それは

 ③ 生徒自身が「振り返り」、「次の目標設定」を行う

 学習の主体者である生徒本人が、自分の取り組みを振り返り(内省)、これからどのように学習するかを宣言する(目標設定)ことは、とりわけ中学生の学びにとって重要なことだと考えられます。単に①②のデータを示すだけではなく、生徒本人の主体的な行動に結びつくような仕掛けをあえて入れてみました。


 「1か月の学習記録」は2016年の最後の登校日に、約250名の全生徒へお返ししました。可視化された学習の量と質を振り返り、次の目標を立てた生徒たちの、新年からの学習の取り組みに期待したいです。(岡部悟志)

 

▼資料1:生徒へお返しした「1か月の学習記録」

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▼資料2:「レッスン」について

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