プログラミング教育で地域創生、
官民学が連携して地域人材を育成する島根県松江市の一大プロジェクト

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 タイピング不要、直感的に使えるスモウルビーの登場

最近のプログラミングには、英字や記号などをタイピングしないでもプログラムがつくれるScratch(スクラッチ)という言語がある。スクラッチは、あらかじめ用意されているブロックを組み合わせることで感覚的にプログラムをつくれる言語なので、初心者の定番になりつつある。

戸谷さんの中には、フローチャートを組み合わせてプログラムの流れを理解すればいいのではという考えもあったが、教材用のプログラムをなぞるだけでは発展性がない。また、松江市に縁があり、一般にも使われているRubyを教材化できないかと考えていた。そんな状況を一変させたのがスクラッチ風のブロックを組み合わせるだけで自動的にRubyのプログラムに変換されていくというSmalruby(スモウルビー)の登場だった。

Rubyプログラミング少年団の理事長である高尾宏治さん(前出)も中学生Rubyプログラミング教室で同様の問題を抱えていた。タイピングではなく、スクラッチのようにRubyを扱えないかという悩みだ。ここから高尾さんは、2013年にスモウルビーを自ら開発した。スモウルビーは、スクラッチのような感覚的な操作方法を保ちながら、Rubyプログラミングを実現できる言語だ。ちなみにスモウルビーは2014年から一般公開されている。

Webブラウザで動作するスモウルビーエディタの画面
Webブラウザで動作するスモウルビーエディタの画面

 プログラミング教育の評価は?

スモウルビーが開発されたことで、戸谷さんはPC画面内のキャラクターを動かすだけでなく、実物の自動車型ロボットを動かしてみようと考え始めた。

「地元の教材屋さんにスモウルビーと連携したスモウルボットという小型ロボットをつくっていただき、今年度の1学期はスモウルボットを使って授業をしました。先日、これを使って市内の中学校の先生に向けて講習会を行いましたが、特に使いづらいとか困るとかいうご意見はなかったので、今年度の後期から採用していく学校もあるのではないでしょうか」(戸谷さん)

一方、スモウルビーを使ったプログラミング教育での生徒たちに対する評価の仕方について、戸谷さんはどのような観点で見ているのだろうか。

「技能に関しては、スモウルボットを課題の通り動かせたかとか、自分の狙い通り動かせたかという点を見ています。工夫の面に関しては、使いやすいかどうか、生活に生かせるかどうかという点を見ています。知識は、Rubyではなくプログラミング全般やITリテラシーに関する点です」

逆に評価が難しい面もあるという。

「評価が難しいのは創造性です。授業では内容を習得させる必要上、課題を1つのゴールに設定しがちです。現在、創造性を評価できるような課題を設定できるように取り組んでいます」

最初はオープンソースラボで始まったRuby教室が、まずは松江市立第一中学校で採用され、多くの生徒たちの心に火をつけ、いよいよ来年度からは松江市の全中学に広まっていく。現場の先生のモチベーションが高いのもよくわかった。これからの松江市のプログラミング教育を考えると、なんとも楽しみではないか。着実に歩みを続けている松江市立第一中学校のプログラミングの授業。戸谷さんがRubyの授業を進めるうえで多くの助言をもらったのが、Rubyプログラミング少年団の理事長を務め、スモウルビーを開発した高尾宏治さんだった。

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