Q. 生徒の学習をよりよく支援するためには、どのような情報を教員にフィードバックするのが良いでしょうか。
教員は、日々生徒たちと接しながら、生徒の学習面や生活面などを理解しようとしています。普段からよくできる生徒や、いろいろなことを話してくれる生徒は、教員にとって理解しやすいです。しかし、成績中位層の生徒の学習状況や変化などには、なかなか気が付きにくいのが現実です。そもそも家庭学習をやっているのか、各教科の問題はどの程度解けているのかなどについては、日ごろのコミュニケーションの中だけでは、なかなかつかめません。
例えば、学習記録を見てみると、頑張って多くの問題を解いているのに、正答率がほとんど変化しないことや、間違えた問題をそのままにしていて解き直しをしていないなど、「学習をしているのに伸びていない」といった状態が可視化され、気づかされることがあります。逆に、「最近は間違えた問題の解き直しを必ずするようになってきた」ことも可視化されます。そういった、学習についての変化やその兆しが可視化されることによって、教員は、生徒の学習状況に応じた支援がしやすくなります。
Q. 学習記録データから豊富な情報が取り出せますが、教員にはどのように情報をフィードバックするのがよいでしょうか。
私のように、データ分析の専門家からすれば、データは豊富な方が良く、いろいろな観点から分析し、その関係をひもときます。しかし、教員にデータを示す場合には、情報過多にならないようにすることが大切です。いきなり膨大なデータを見せられても、戸惑ってしまうかもしれません。必要なデータのみに絞り込んだり、見るべきポイントにマーキングしたりすることで、データを読み解く負荷を下げ、教員が生徒の課題を把握しやすいように工夫するとよいでしょう。
具体的には、「学習量」「正答率」「解き直しの有無」などの実績を見ていくわけですが、学校全体・クラス全体といった集団全体のデータと個々の生徒のデータを比較してとらえられるようにしておくことが有効です。
Q. 教員と生徒が学習記録を共有するメリットと、見るべきポイントは何でしょうか。
多くの生徒は、「自分なりに頑張った」ことを
Q. 生徒が主体的な学びをできているかを測る指標は何かあるでしょうか。
主体性の定義は様々ですが、「自分で課題を見極め、解決するという目標に向かって努力すること」という観点とここではとらえます。
主体性について忘れてはならないのは、「他人と比べてできているかどうかは問題ではない」ということです。ほかの子よりも学習時間が少なかったとしても、自分が立てた目標に向かっていれば、主体性が発揮されているとみることができます。これまでまったく勉強をしなかった生徒が「毎日コツコツ頑張る」という目標を立て、宿題だけでも毎日取り組むようになるのも、主体性の表れとみてよいでしょう。逆に、力のある生徒が教員から与えられた課題だけをこなしている状態では、主体性が発揮されているとはみなせません。毎回、目標をクリアしている生徒であっても、その目標自体がいつも低い設定となってしまっては、主体性があるとはみなせないでしょう。いずれにせよ、教員が一律に課題の量を決め、それを超えているかどうかだけを尺度にしてしまうと、特に成績下位層の生徒の変化を見逃してしまうので注意が必要です。
生徒の状況に依拠するので、毎日コツコツやることなのか、あるいは課題を100%やりぬくことなのかなど、学習の量や進め方、目標を生徒なりに自分で決めさせましょう。そして、目標に向けて学習ができているかどうかをワークシートなどで振り返らせ、この記述内容を授業時間内外の学習記録データとあわせて分析することで、主体性の表れも見ていくことができると思います。
いずれにしても、学習記録は生徒の学びをよくするためにあるので、そのための活用の仕方を深めていきたいですね。
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