様々な場所で色とりどりに活躍している20代、30代。彼らのインタビューを通して、これからの社会で活躍し、「Well-being」に生きるためのヒントを探っていきます。
今回は、他社の最終面接まで勝ち進んだ、優秀な学生をスカウトできる新卒採用のサービスを立ち上げた株式会社ABABAの久保 駿貴さんにお話をうかがいました。
「選んだ道を正解にする」
自分を信じて進路を選択し、事業を生み出す
- 久保 駿貴
株式会社ABABA(アババ) 代表取締役
1997年生まれ。兵庫県出身。2021年岡山大学理学部卒業後、神戸大学大学院海事科学研究科入学。同年9月をもって退学し、10月より岡山大学大学院に進学。岡山大学在学中に「最終面接までの頑張りが評価され、オファーが届く新卒採用のサービス」を提供する株式会社ABABA( https://abababa.jp/home)を創業。同サービスは経済産業大臣賞受賞。全サービスをノーコードで開発したスタートアップとしても注目される。
「お祈りメール」を他社への推薦に転換する
「ABABA(アババ)」を創業
3年前、大学3年生になった私の周囲には、就職活動に明け暮れる友人があふれていました。大学院進学を希望していた私を尻目に、就職を希望する友人たちは日々、企業からの合否連絡に一喜一憂していました。そうした中で、忘れられない出来事が起こります。仲のよい友人のもとに、第一志望で最終面接まで進んでいた企業から「お祈りメール」が届いたのです。「お祈りメール」とは企業からの不採用通知のこと。「一層のご活躍をお祈り申し上げます。」と締めくくられていることから、就活生の間ではそう呼ばれています。
「もうこの会社が関わる商品は一生買わない!」
そう毒づく友人を懸命に励ましたのですが、彼は日に日に元気を失っていきました。そして、最終的にはうつのような状態になってしまったのです。憧れの企業に就職できなかっただけでなく、第一志望の企業にかけてきた労力や時間、費用がすべて無駄になり、ゼロから就職活動をしなければいけないことにも、彼は苦しんでいるようでした。
「最終面接で落とす」ことには、その企業にとっても、「大ファン」を「大アンチ」に変えてしまうリスクがあるはずです。「この状況は誰も幸せにならない」、そうした思いから、私は解決策を模索し始めました。
調べていくうちにわかったのは、就活生の実に7人に1人が「就活うつ」と呼ばれる状況に陥ることでした。中には、自ら死を選んでしまう方がいることも知り、私は衝撃を受けました。友人の問題に端を発して関心を持ったことでしたが、就職活動には大きな社会問題が横たわっていることを知ったのです。
優秀な学生の「就活うつ」を防ぐために何ができるのか、ヒントを得るために、企業の人事担当者にヒアリングをしました。すると、最終面接で不合格となるのは、実力はほぼ保証されているけれども、社長・役員との相性や企業文化が合わない、あるいは景気の問題で採用人数を減らさざるを得なかったといった背景があることがわかりました。そして、「他社の最終面接で落ちた学生は、一定の能力が担保されているので、むしろ採用したい」といった企業の本音が見えてきたのです。加えて、人事担当者には、機械的に不採用のメールを出しているのではなく、「いつも泣きながら送っています」と言われました。「素晴らしい学生でしたから、他の企業に紹介したいと思うくらいです」という声も聞かれたのです。
学生の状況と人事担当者の思いを受けて、私は大学4年次となった2020年11月、ABABA(アババ)をリリースしました。それは、「自社で惜しくも採用できなかった学生を企業間で推薦し、同時に他社の最終まで進んだ学生をスカウトできるプラットフォーム」です。現在は、月間スカウト数が1200件を突破するまでに拡大しました。
編集後記
「自分が選んだ道を正解にしていけばいい」という言葉を、久保さんは身をもって体現しているのだと感じました。すべてを肯定していく力強さがあるからこそ、失敗が失敗ではなくなっていくのでしょう。「どんなチャレンジをしても、きっと正解に変えていける」という久保さんから刺激をいただき、私も前へ前へと背中を押されました。
久保さんの「これから」も、きっとチャレンジに満ちあふれたものとなるでしょう。そのチャレンジが、今、支援の手が届いていない子どもたちに向かっていく可能性があるということがこの上なくうれしく思います。私も教育に携わる者の一人として、自分に何ができるのかを問い続ける取材の時間となりました。
2021年7月19日取材
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