「発達障害のある人たちの就労に関わる問題」
Kaien利用者 座談会編【後編】

本テーマのフォーラム第5回は、(株)Kaienのご協力のもと、同社のサービスを利用する方々にお話を伺いました。座談会にご参加いただいた当事者の皆さんは、「発達障害のことについて知ってほしい」という思いから、個人的なことも含めさまざまなお話をしてくださいました。
後編では、就職活動で発達障害があることで皆さんが直面する困難や、働きやすい/働きづらいと思う職場について、また「働く」ということについて、語っていただいたことをご紹介します。


<座談会参加者>

Aさん(19歳):自閉症スペクトラム(ASD)。最初に診断を受けたのは6歳の頃で、そのときの診断はアスペルガー症候群。こだわりが強く、話を簡潔にまとめるのが苦手。

Bさん(24歳):中学校1年生のときに自閉症スペクトラム(ASD)の診断を受ける。聴覚過敏があり、人前で報告や発表をすることが苦手。

Cさん(25歳):初めて診断を受けたのは高校1年生のとき。過去にいろいろな診断を受けているが、1つに絞ると広汎性発達障害。

Dさん(24歳):約2年半前に初めて診察を受け、2016年1月に注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断を受ける。障害者手帳3級を取得。

Eさん(24歳):5年ほど前にアスペルガー症候群との診断を受ける。得意分野と不得意分野に大きな差があり、興味の対象が限定的。


※本記事では、表現の校正や統一など、編集による改変を極力行わずに、参加者の発言を再現しています。
また、記事中に引用した過去のCO-BOフォーラムに登壇された方々のご所属や肩書は取材当時のものです。

多くの人が感じている、面接試験の難しさ

―これまで経験した就職活動と、活動中に苦労したことを教えてください。

Aさん:高校はサポート校(※1)に進学したのですが、高校3年生のときに、上野の職業センターでやっている実習(※2)に行ったのが最初の活動です。その後何度か実習の話はあったんですが、障害の程度などの関係で、参加はできませんでした。職業訓練校にも行けなかったので、今ちょっと、居場所がない状態です。
接客アルバイトに応募したこともありますが、面接で落ちました。結局今は、面接のない、誰でもできる登録制のアルバイトをしていますが、そこではうまくやっています。

※1一般的には、通信制高校の卒業を支援するための民間教育機関を指す。学習面の支援だけでなく、生活面など多様な支援をしている機関もある。
※2障害者枠での採用の場合、書類審査後に一次選考があり、その後実習、二次選考と、選考期間中に実習の入る場合がある。さらに、選考を受けることなく実習を経験できる支援事業を行っている機関もある。この話のなかでは、Aさんは後者を利用して実習体験をしたときの話をしている。

Bさん:私も一度だけ実習を受けたことがあります。就職活動でも本当に面接が大の苦手で、書類審査で落ちる場合は先方都合が理由の場合が多いのですが、基本的に面接で落ちます。その先に行ったことはほとんどありません。私の場合、面接を通って実習を受ければ評価していただけるので、面接がキーポイントになってくると感じます。
ハローワークの合同面接会のような環境ですと、まわりの音も拾ってしまって、面接官の質問を聞き取りづらいことがあります。比較的上手に受け答えができても、他にいい人がいたりすると、その人が優先されてしまうので、私のような人間が受かることはなかなか難しいと思います。

Cさん:僕は今、就職活動をしてたんですけど、障害者枠1本でやっていて、受けた数は10社か20社ぐらいです。障害者枠のある企業で絞っていて、業界では絞っていないです。自分に合ってるか合ってないか、できるかできないかっていうことを、採用要項を主に見て、それで決めるかたちですね。 どんな会社なんだろうって考え出すと不安が先に来てしまって。入社後できるんだろうかみたいなことを考えてしまうから、会社選定のときに選ぶのが難しいです。エントリーシートを書く際にも、ネガティブなこととかマイナスなことはすごい出てくるんですけど、自分のいいところってなると、なかなか自分でわからなくて、そういうところで結構苦労しましたね。

座談会にご参加いただいた皆さん

Dさん:就職活動は、専門学校卒業後に3社くらい面接を受けました。就労移行支援を利用してからは10社ほど、面接を受けました。その就職活動のなかで難しいと感じたのは、いわゆる不文律的な部分ですね。たとえば「都合のいい日をお知らせください」と言われて、候補日を3つ挙げるみたいな不文律があると思うんですけども、そこで自分の一番都合がいい日を1日だけ言ってしまったりとか。あとは、面接の練習を全くせずに面接に行ってしまったりしました。

Eさん:Kaienを通じてというのもありますし、あるいは両親に何か情報を教えてもらうとか、そういう手段で就職活動をしています。企業、業種は絞ってないですね。障害者枠、一般枠も特に絞ってないです。働きやすい環境があるかどうかというところを重視しているので、そこはあまり絞ってないですね。書類選考等も含めると、10社ぐらいはもう既に受けていると思います。
難しいと感じたことは、面接には答えがないっていう、そこが難しいですね。場合によっては質問の意図を汲み取ることができないとか、言語外の意味を汲み取れないとかそういうこともあって、面接は難しいなと感じます。


参加者からは、「面接が苦手」という話が多く聞かれました。一方で、たとえば新卒採用時には「コミュニケーション能力」が非常に重要視される傾向が年々高まっており、面接の結果は合否を大きく左右します。このふたつを合わせて考えると、東京大学先端科学技術研究センター 近藤准教授が「多くの日本企業の選考では、他者とのコミュニケーションをうまくとれる人が有利であり、それゆえに発達障害のある人の一部は非常に不利な状況に立たされる」と話す現実が透けて見えます。

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苦手だからこそ、面接練習は有意義

―これまでの経験から、就職活動について誰のどんな支援が有効だと思いますか?

座談会にご参加いただいた皆さん

Aさん:事務の仕事がしたいので、パソコンの使い方ですとか、事務に関連することや一般教養を丁寧に教えていただいたり、何がよくなくて何がよかった、どうすればよかったっていうのを丁寧に、私自身に直接言っていただけると、一番サポートになると思います。就活のためのパソコン教室も有意義です。あとKaienのガクプロ(※)のしゃべり場ですとか、ビジネススキルの訓練も有意義だと思っています。プラスアルファで、相談所みたいな場所で相談することも有意義、ハローワークに行くことも有意義な時間ではないとは言いません。

※大学生、大学院生、専門学校生を対象にした、(株)Kaienの就職活動支援プログラム。学習面や生活面のサポートも行っている。

Bさん:Kaienの職業訓練は、非常に有意義だと感じております。また履歴書の添削や面接練習を行っておりますので、その経験も活きてくると思います。

Cさん:サポートとしては、保護者の支援。うちは結構放任だったので、「就職活動は何とかなる」みたいな感じで。結構力を入れてくれる親もいるっていうのは、Kaienで聞いたことがあるので、親が力を入れてると、それだけ当事者も頑張れるというか。
今までやってきた有意義だと感じる就職活動対策は、面接練習。面接練習は自分も初めは苦手だったんですけど、場数を踏んで何度もやってるうちにだんだん面接というものに慣れてきた、までは言いすぎなんですけど、徐々に「こういう感じなんだ」っていうのがわかってくるので、面接練習はとても有意義だなと感じました。あと書類作成ですね。自分で書いてるだけだと、文章としてイマイチ。添削してもらうとより良い履歴書になるので、書類対策はよかったなと思います。あと、土曜日のセッションで事務体験等があるんですけど、そのときに実際の会社に入ってやるような作業を疑似体験できたっていうのは、あ、こういうことをやるんだって掴めたのはよかったなと思います。

Dさん:有意義だと感じている就職活動の対策、これは面接練習とか、あとは履歴書とか。面接での想定問答など見てくれたりするので、大変役に立っています。

Eさん:有意義と感じている就職活動対策は、やっぱり書類作成練習ですかね。何を問われているのかとか、どういうことを言えばいいかとか、そういうところがわからないので、それがわかったうえで準備できると、いいなとは思います。


特に新卒採用試験を受ける際には、多くの学生が面接練習やエントリーシートなどの書類の添削を受けますが、こうした支援は発達障害のある人にも共通して有効であることがわかります。だからこそ、障害のある人が適切な支援にたどり着くことのできる仕組みづくりや、彼らの特徴をとらえた支援の在り方の確立は、今後さらに進められていくべきだといえるでしょう。

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障害のあるなしで、就職活動は変わる

―これまでの経験から、障害のない人たちとの就職活動に違いを感じますか?感じるならば、どんなことですか?

Aさん:就職活動にも違いがあって、面接の受け方とか、面接のその雰囲気とかも何となく、聞かれる内容も違うのではないかと。障害のことを聞くか聞かないかの違いですね。私が受けた訓練校や会社の実習は全部障害者枠なので、障害のことを聞かれました。やっぱり一般枠だと聞かれないっていう、その違いはありますね。あと残業に対する配慮がある旨の説明を受けるってとこですね。

Bさん:やはり障害特性を聞かれるか聞かれないかが大きな違いかと思います。また、場合によっては実習が採用基準になってきたりしますので、その点が異なるかと思います。

座談会にご参加いただいた皆さん

Cさん:最近まで一般枠と障害者枠、どっちで行こうかなっていうのをずっと迷っていました。お互いに決め手がないというか。でも親に相談したり、医者の先生に相談したり、Kaienの人に相談したうえで、障害者枠の方がいいんじゃないっていう結論になって、障害者枠ということにしました。障害が診断されたから、障害者枠っていうのを選ぶきっかけにもなったので、それで障害者枠に決めるっていう変化がありました。

障害がない人との就職活動についての違いは、まず配慮事項が言えるかどうか。自分はこういうことが苦手です、こういうこと配慮していただけると助かりますっていう配慮事項を一般枠では多分言えないと思いますので、そこがやっぱ違うのかなと思います。一般枠では、面接は自分の強みとか長所をアピールする場だと思うんですよ。でも障害者枠の場合は、弱みとか苦手な部分を聞いて、その人の本質を知ろうとしてくれるので、弱みとかを言えるというのは、一般枠とは違うのかなと思います。あとは、一般枠の場合は志望動機とかそういうことを聞かれると思うんですけど、障害者枠で私が受けた感じですと、あまり志望動機に重点を置いてなくて、やっぱり障害の特性だとか配慮事項だとかそういう対策とか、あなたはどういうことを配慮すればうちで働けますかってことに重点を置いているのが、一般枠の質問とは違うのかなと思います。
あとは先ほどおっしゃっていた通り、一般枠ってインターンはあっても、内定が決まる前に実習ってなかなかないと思うんですけど、障害者枠の場合は結構実習というかたちが多くて、短ければ1日で終わるものもあれば、2週間とかかけてやるものもあって。実習で「実際この人働けるのか」っていうことを重視する。障害者枠の場合は筆記試験をやるよりも、その人のどういうところが長所なのかってことを実習を通して見たいと思うので、実習を重視する企業が多いのかなと思うし、そこが一般枠と違うのかなと思います。

Dさん:そもそも障害のある方とない方で、能力上の格差があったりするので、そのうえで合理的配慮っていうんですかね、合理的な理由を説明して、お互いの交渉を経て、ある程度の配慮を受けることができるっていうことかなと理解してます。

Eさん:障害のない人たちとの就職活動の違いは、そうですね、あると思います。面接において、言外の意味とかそういうところを汲み取ることができないので、より準備が必要になると思うので、それは違いかなと思います。


参加者の話からは、少なくとも企業の障害者枠においては、採用試験や採用後の就労環境などについての配慮がなされているような印象を受けます。見方を変えれば、障害のある人が一般枠で就労をしたい場合には、難しい現実があるのかもしれません。どのようなルートを経て、どのような企業で、どのように働くのか。情報提供および収集と、適切な支援の必要性をあらためて感じます。一方、発達障害がどの学校にも一定数いることが分かっている今日において、こうした支援が、Kaienのような専門支援機関だけでなく、一般的な就職支援をしている学校でも行われているのかが気になります。

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個性や障害を認めてもらえる職場は働きやすい

―どんな職場であれば働きやすいだろうと思いますか?

Aさん:今の倉庫でのアルバイトは、勤務時間はちょっと長いんですけど、通勤がラッシュと被らず座って通えるのがいいです。接客ではないし、人との距離感もちょうどよくて、上司も「間違いは仕方ないよ」って言ってくださる。個性的な人を受け入れてくださって、上司も「みんなと同じじゃなくちゃダメだ」って言わない。一定の常識を守っていれば、自由にしていて構わないっていう雰囲気があるので、精神的なストレスがありません。
接客は、ダメですね。接客でクレームとか言われるのが一番怖いです。「〇〇って言ったのに、なんで分かんないの?」って言われたり、「知っていて当たり前」というような顔をされると怖いです。急な予定変更や臨機応変な対応が苦手なので、土日出勤も苦手です。

Bさん:働きやすい職場はよくわからないんですが、働きづらい環境ならわかります。教職課程を取っていたこともあって、教育実習を受けたんですが、学校の職員室は発達障害を持っていると働くのは難しいと思いました。臨機応変、迅速な対応を求められますし、マルチタスクであったり、特に発達障害の人が苦手とする業務が非常に多いので、教員には向かないと思います。ただ仮に学校で働くとしても、事務職員であれば働けると感じました。

座談会にご参加いただいた皆さん

Cさん:障害者ってことを言えて働ける職場のほうが、働きやすいのかなと思います。あとはやっぱり人間関係ですかね。人との関係がうまくできないと、職場に行きづらくなってしまって、働きづらいのかな。働きやすい環境は、理想を言えるのであれば、理不尽な怒り方や、感情的に怒らない職場だったら働きやすいのかな。その人の能力によって仕事の量だったりその人に合った仕事をやらせてもらえば、働きやすいのかなとは思うんですけど、ちょっとそこはまだわからないです。
働きづらいなと思うのは、職場環境ですかねやっぱり。仕事がすごく難しいだとか、ノルマがあって速いスピードでやらなきゃいけないだとか、業務に関して求められるレベルが高いと難しいのかなって思う。上司だとか同僚とかが自分のことをどれだけ理解してくれるかっていうのによって、働きやすいか働きやすくないかっていうのが違うかなと思います。

Dさん:朝が弱いので、通勤は大体1時間以内ぐらいで、できれば始業時間が10時ぐらいで遅めだとありがたいかなと思います。理由や過程を全く評価しないような職場はかなり厳しいかなと思います。あとは質問やミスをすると怒られる職場はちょっと難しそうだなと、思いますね。

Eさん:現実的かどうかはともかくとして、まず勤務時間なんですけど、たとえばフレックスタイムという制度は一般枠にはあるが、障害者枠ではないと、そういうところもあるんです。むしろ障害者枠こそ、フレックスタイムにすべきなのかなと思いますけど。たとえば電車に乗る場合だと、感覚過敏があると満員電車に乗るのが辛いんですよね。なので、フレックスタイムの導入っていうのはむしろ、障害者枠に導入されるべきなのかなって思います。それと、インターネット上で成果物を出すようなかたちにすればやりやすいのかなっていう気もします。できる環境はあると思うので、出勤する必要性があるのかなという気はしますね。職場の環境でいうと、仕事後の宴会とかそういうものに強制しないっていうのはひとつあると思います。分煙も必須なのかな。
逆に働きづらいと思うところですけど、働きやすい環境の逆だとまず働きづらいと思います。付け加えるとしたら、一般枠、障害者枠関係なくだと思うんですけど、残業とかそういうものを強制するようなところだとまず、働きづらいのかなと思います。あとは、個人的には(聴覚過敏があるので)ザワザワしてる環境だと、働きづらいです。


就労支援を利用していることもあり、参加者たちは自分の「弱み」や「苦手なこと」をきちんと認識しています。だからこそ、職場に対して配慮してほしいことも分かっていますが、重要なのはこれらをきちんと伝えられる機会があるのか、そして実際に配慮してもらうことができるのか、ということです。障害者からの訴えを、彼らのわがままではなく、彼らが組織に貢献できる方法として前向きに受け入れ、職場に展開できるかかどうか。「合理的配慮」とは、まさにこのことなのだと感じます。

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障害についての知識を持ってほしい。できること、苦手なことを理解してほしい

―企業や、一緒に働く人に理解してほしいことはなんですか?

Aさん:まず社会全体に対してもなんですけど、精神障害者ですとか発達障害のグレーゾーンの方の枠がほしい、(今は)少ないってことをわかっていただきたいなと思いますね。企業に理解してほしいことっていうのは、自分の特徴ですね。苦手な部分だけでなく、できることも含めて理解していただきたいと思います。職場で働く人にも理解してほしいのは、自分の特徴。あと、本人に直接言うってことを一番理解していただきたいですね。私がよからぬことをしてしまったら、「これはダメだよ」ってその場で言っていただかないと困る。「今の何々がダメなんだよ」「人のことを『変』って言ってはいけません」「空気読めてないからダメだよ」「会社で(それは)言っちゃいけないよ」っていうことをちゃんと言っていただかないと、私はわからないので。噂のような形で誰かを経由して後から聞くのが、一番傷つきます。

Bさん:もう少し発達障害者が働きやすい環境、就労しやすい環境にしていただきたいと感じます。ハローワークの合同面接会でもやはり、身体障害者の方を優先されてしまいます。そういった面ではまだ、雇用に関する課題は残っていると思いますので、少しずつでいいので解決していただけるとありがたいと思います。また職場で働く人には、発達障害の人のなかには学生時代の頃から苦労している人もいますので、いじめるようなことはしないでほしいですね。

Cさん:企業に理解してほしいことは、普通とは違うんだということです。障害だからとかそういうわけではなくて、ちょっとこの人は、普通とは何かしら感覚がちょっと違うんですってことを理解していただけると、働きやすいのかなということと、発達障害という障害についてもっと企業の人が知識を深めてくれれば、発達障害の人も働きやすいのかな。
あとは薬を飲んでいるので、それを理解していただければ。薬を飲んでるとダメって人もいるんですが、そこは一応、僕の場合はこれ(薬)で安定してるんですってこともあるので、それは認めてもらいたいなっていうのと、あと苦手なことは極度に苦手ですってことを、あらかじめ知ってもらいたいですね。あとはその人の能力ですね。その人の能力に合った仕事を与えてもらえばできますってことなので、その人の能力を見てもらいたいってことですね。職場で働く人に理解してほしいことは、その人の本質を大きな心で見てもらいたい。あとは、先ほどと同様で、発達障害っていうことの障害についてやっぱ理解していただきたい。あとやはり、ストレス耐性でしょうか。障害を持ってる方って、特に発達障害の人って、自己肯定感が低いっていわれるので、怒られ慣れていないこともあると思うので、自己肯定感を損なわないようにうまく怒るなり、ほめるなりして、うまくそういうところを配慮していただきたいなってことがあります。あとは面接で言ったような配慮事項、たとえば抽象的な説明をされるとちょっとわかりづらいので、なるべくあれこれではなくて、具体的に説明していただけると助かりますだとか、不器用なので細かい作業は苦手ですけど、逆に記憶力はすごくいいですとか、そういう特性を理解していただけると、働くうえでは助かるので、職場の人には、その人の強みを理解していただけるといいなと思っております。

Dさん:広い意味ですと、障害者枠の雇用の場合だと、選考過程の面接ってあまり意味がないのではないのかなというふうに感じています。みなさん能力上のバラツキがありますので、あまり面接とかって意味がないのではないかなと思うので。職場で働く人に理解してほしいことですけど、これは僕の場合は、自分の障害に対する評価はされたくないなというふうに感じていて、特に上から目線の評価ですね。思うのはしょうがないんですけど、できれば口に出さないでいただきたいなというふうに、ってことです。

Eさん:もそも知識を広げてほしいというか。こういう座談会とか、記事とかで広がっていけばいいのかなと思います。職場で働く人に理解してほしいこととしては、希望みたいになるかもしれないですが、みんなと同じじゃなきゃいけないという、そういう価値観を押し付けるような、そういう風潮がなくなっていけばいいなと思いますね。海外とかだと結構そういうの、たとえば誘いとかそういうのは断っても別に問題ないって話をよく聞きますし、(日本の職場も)そうなっていけばいいのかなと思います。


「発達障害のことをもっと知ってほしい」という当事者からの訴えは、社会全体で受け止めなければならない切実な意見です。障害のあるなしにかかわらず、多様な人が能力を発揮できる職場づくりに、相互理解は欠かせないという意識を社会で共有していくことが必要なのでしょう。

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就労は生活に必要な手段。でも、それだけではない

―将来的にやってみたいことはなんですか? また、ご自身にとっての「就労」の意味を、教えてください。

Aさん:やってみたいことは、事務系のパソコンですとか、電話応対もできればしてみたいなと。マニュアル通りの電話応対、「部長いますか?」「何々は席を外しております」っていうような応対は3回の実習でやりましたので、慣れてますし、実際にアルバイト先の社内の電話に出たりして慣れてるので、できることはどんどん挑戦したいと思います。
給料のほうは、一般枠よりちょっと安いぐらいを目安としてますね。そんな変わらなければいいかなと思います。生活に困らないようなところで働きたいと思います。私にとって就労っていうのは、将来困らないことですね。お金に困らない、生活に困らない、衣食住ができるっていう、そういうことに困らない。社会性がありつつ、自分の生活をまかなう、できるっていうことが、就労の意味だと思います。自分が生活をするため。自分が子どもを養うための最低限の生活をすることが、最終的な就労なのではないかなと思います。社会性があるってことひっくるめて、そういうことなんだと思います。

座談会にご参加いただいた皆さん

Bさん:将来的には職場でもプライベートの場でも、いろいろやってみたいとは感じています。苦手なことは電話応対がまだ苦手なのでできないのですが、少しずつ慣れていこうと思います。5年かけてでも慣れていこうと感じています。仕事ではパソコン作業はもちろんのこと、もしもチャンスがあれば、少し大きな仕事も任されてみたいと思っています。
就労の意味は、やはり幸せになることでしょうか。幸せになるための必要なことの1つが就労であると感じております。好きなものを買ったり、美容のためにあてたり、そういうことにお金を使って幸せになること。就労するとお金がもらえますので、自分のためにもいろんな人のためにも使えると思います。

Cさん:将来的にやってみたいことは、社会に対して発信できる人になりたいなってことと、あとは福祉ですね。自分が発達障害ってこともあるので、発達障害の認知を深めるような活動を、ボランティアでもいいですし、何らかのかたちでこれも発信していきたいなって思っています。あとはこれは先のことになるんですけど、海外に行って、さまざまな福祉の現場とかっていうのを見てみたいなというのはあります。どこの国では発達障害はどれくらい認知されていてとか、(法整備、環境整備などの)進み具合とかも肌で感じて、それを日本の福祉に活かせたらいいなって思ったりします。
自分にとって働くこと、就労の意味は、社会の一員として何らかのかたちで貢献しているという自信ですかね。あともう1つは、ほどよい緊張感。緊張感がなくなってしまうと、どんどん堕落していくと思うので。たとえばお金をもらったときに何か買うとか食べるとか、そういうときにあの緊張感があったからって喜びも倍になると思うので、そういう緊張感と、あとは達成感ですよね。仕事をちゃんとできたっていう達成感によって生じる対価をもらう、社会的な居場所みたいな感じですかね。

Dさん:まず僕は趣味がボードゲームなので、つくれるならボードゲームをつくってみたいというのがあります。2点目は、最近人工知能ですとか、自動運転ですとか、ゲノム編集技術とか、そういう科学技術がたくさん出てきているので、何らかのかたちで科学に貢献したいなっていうのはあります、就労の意味は、僕の場合2点ありまして。1点目が自身の能力を高めたり、能力を維持するための手段であるってこと、2点目としては、生活をしていくための手段であると捉えています。

Eさん:これまで勉強してきた音楽学は、学問のなかで一部にすぎないと思うんです。アメリカみたいにダブルメジャーとかでもないし、全然狭い世界でしかやってないんで、全く違う分野の勉強をしてみたいですね。
就労の意味としては、まず1つは義務というのはあると思うんですよね。いつまでも、保護者に助けてもらうとか、そういうわけにもいかないので、義務というのはあると思います。もう1つは、義務と近い部分はあるんですが、生活するために必要なので、するしかない。生活するためにはお金が必要っていうこともありますし、それが義務に近いとは思うんですけど、意味の2つ目になるかなと思います。

Editor's Eye

それぞれの話を聞くと、まずは一人ひとりが直面する現実に悩みながらも、自身の将来のために歩み続けている他の若者と同様であることが分かる。そして、得意なことや苦手なことはもちろんのこと、障害の受け止め方や、まわりに配慮してほしいことなど、共通点があるとはいえ、むしろ個々で意見が違うことに気づく。障害があることで彼らを一括りにして、「障害者とはこういうものだ」と理解しようとすることには無理があり、だからこそ、「障害者差別解消法」に明示された「合理的配慮」を社会に根付かせていくことの重要性が高まっているのだ。 今回、座談会参加者の参加動機が「発達障害について、多くの人に知ってほしい」ということであったので、個人的なことについて多くのお話を伺うことができた。参加者の皆さんと、座談会を設定いただいた(株)Kaienにこの場を借りてお礼を申し上げるとともに、この記事を通して発達障害への理解が少しでも進むことを期待したい。


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【企画制作協力】(株)エデュテイメントプラネット 山藤諭子、柳田善弘

【取材協力】株式会社Kaien、座談会にご参加いただいた皆さん

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