教育フォーカス

【特集7】学校教育におけるICT活用の可能性を考える

[第4回] 教育委員会や学校現場での調査結果の読み方・活かし方  [2/2]

■ 指導者用電子教科書の導入で提示する教材が増える(コンテンツの充実)

本調査によると、「電子黒板などで教材を拡大しながら説明する」「動画や3D映像などのデジタル教材で説明する」については、今後取り組んでみたいと思っている教員の割合が高いのに対して、現在取り組んでいる割合は約3割に止まっている(図9)。この原因として、電子黒板が導入されていないことや、適切なデジタル教材を探す時間がとれないことなどが考えられる。

ICTを活用して現在取り組んでいること、今後取り組みたいこと(一般校)

※クリックすると拡大します。

図9 ICTを活用して現在取り組んでいること、今後取り組みたいこと(一般校)

解決方法の一つとして、指導者用電子教科書の導入が有効であると考える。指導者用電子教科書の整備については、普通教室でつねに使える小学校は約2割、中学校は約1割とまだ低い状態である(図5)。授業で一番多く使われるのは教科書であり、指導者用電子教科書には、動画や3D映像、シミュレーター等のデジタル教材が豊富に用意されている。また、電子黒板がなくても、部分拡大や書き込みなどが可能となる。 柏市では、デジタル教科書の導入後約8割の教員が利用するようになったことから(図10)、今後各校に電子黒板が導入されることで、多様なデジタル教材を拡大提示したり、書き込んだりしながら説明する教員が多くなることが期待される。

デジタル教科書の活用頻度(柏市 H25.10月)

図10 デジタル教科書の活用頻度(柏市 H25.10月)

■ 導入時研修で教員の意識が変わる(教職員研修の重要性)

先に、柏市では指導者用電子教科書を利用している教員が増加してきたことを述べたが、導入前は、教員の期待(意識)はかなり低かった。「積極的に利用したい」と回答した教員は、「ある程度」を含めても2割にも満たなかったのである。(図11)。これは、指導者用電子教科書に対する知識が不足していることが原因であると考え、各校に出向いて研修(2回ずつ)を実施した。

「デジタル教科書を積極的に利用したい」研修後の変容

図11 「デジタル教科書を積極的に利用したい」
        研修後の変容(柏市 導入前:H24.10月 研修後:H25年4-5月)

まず、これまでの授業のなかで改善したいと思うことを、KJ法の手法を取り入れて話し合った(図12)。実物投影機のように拡大提示できることに加え、動きや音のあるものを見せる効果について確認した。次に、指導者用電子教科書のコンテンツを紹介し、実際に電子黒板機能を使って実技研修を実施した。

指導者用電子教科書に関する話し合い

図12 指導者用電子教科書に関する話し合い

研修後に実施した再調査では、「積極的に利用したい」と考える教員は「ある程度」を含めると9割以上となった(図11)。このことから、教員のICT活用を普及・促進するためには、機器の環境整備に加え研修の持ち方が重要であると考える。

■ おわりに

今回の調査で、多くの教員が授業でのICT活用にたいへん前向きであることがはっきりした。ICTの活用により、子どもたちの興味・関心が高まり、理解が深まる効果があると認識しているためである。それを支えるICT環境整備は全国的に進んできてはいるものの、まだすべての普通教室に対応しているとは言い難い。地域や学校のICT環境の格差や、教員の意識の温度差が生じないように、国や自治体が計画的に整備や研修を進めていくことが必要である。

また、本稿では、主に基礎・基本習得の効率化・深化を図るためのICT活用について述べてきた。今後は、環境や研修についても、協働的な学びや主体的な学び、個に応じた学びをめざすICTの活用へとつなげていくことが求められるであろう。[END]

 ページのTOPに戻る

 【特集7】 一覧へ