教育フォーカス

【特集8】「一人一台環境における学びの自立を支援する学習モデルの検討」研究より

[第3回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─分析編  [1/5]

◎ はじめに

2回にわたって、タブレットを用いて、自主学習をクラス内で共有するという取り組みの概要、実践の様子、教員が見取った子どもたちの変化と成果を紹介してきた。今回は、アップロードされた自主学習ノートのログファイル、アンケートの結果などのデータから読み取れる分析結果を報告するとともに、それらを踏まえながら、提案者である東北学院大学の稲垣忠准教授、実践者である東京都世田谷区立砧南小学校の菊地秀文先生に、取り組みを振り返ってもらった。

分析・聴き手:ベネッセ教育総合研究所ICT教育研究室 主任研究員 住谷 徹

0.アンケートや取り組み状況の分析

今回の実践では、実践前後にベネッセコーポレーションの「総合学力調査」の学習意識調査を基に作成した「基本アンケート」(70項目)を行い、小学3年生の1クラス(児童数38人)が、4週間にわたって計14回、前日などに行った自主学習の内容を登録用アプリケーションでアップロードした記録・共有する活動を行った。ノートの登録時には、毎回、「やってみた理由」「取り組んだ方法」など、13項目のアンケートに答えている。さらに、毎週金曜には、稲垣准教授が作成した「ふりかえり→計画シート」を用いて、その週の自主学習の振り返りと、次週以降の計画を考えている。これら3種類のデータを元に分析を行った。なお、数値の算出中心に電気通信大学 情報理工学研究科 久野雅樹准教授にもご協力いただいている。

1.自主学習の取り組み状況について

◎「自主学習」と捉えるか、「宿題」と捉えるか

自主学習のアップロード状況(グラフ1)を見ていくと、基本的に右肩上がりに伸びていき、1か月間、多くの子どもたちが自主学習に取り組んでいる。ただ、日にちが経つにつれて、各日のアップロードは若干減っている。ただ、そもそもの提出状況が高い事や、間をあけながらも継続的にノートを登録している児童も多いため、単純にダウントレンドとも判断できない。時間経過につれてどう変化するのかは、今後、もう少しの実践期間を延ばし見極める必要があるだろう。

また、7日目のアップロードが他の日よりも少ないが、菊地先生によると、この日の前日に黒板の宿題欄にいつも書いている「自主学習」という動機づけをしなかったためだと考えられるという。つまり、この日、自主学習に取り組まなかった子どもは、自主学習を「宿題」として捉えていたと考えられる。一方、「自主学習」という板書がなくても取り組んでいた子どもも13人いた。この子どもたちは、3年生として必要な家庭学習時間として示された1日30分間の学習時間を意識しながら、家庭学習に取り組んでいたと推測される。

自主学習のアップロード人数の累計

【グラフ1】自主学習のアップロード人数の累計

グラフ2の個人別のアップロード率(アップロード日数÷総日数の14日)やアップロードされた日々の取り組み内容を見ると、大きくは「熱心に取り組む層」と「苦戦している層」、そして、「中間層」という三つ位の層に分かれると思われる。この分布はクラス内の学力層にほぼ対応しているという。なお、前述の7日目にも取り組んだ13人のうち8人は、実施期間中のアップロード率が100%であった。

個人別のアップロード率

【グラフ2】個人別のアップロード率

 ページのTOPに戻る

 【特集8】 一覧へ