教育フォーカス

【特集22】新しい時代の"チーム育児"を考える〜乳幼児の生活と発達に関する縦断研究より〜

 【指定討論】 

    大きな社会変化が進んでいる今こそ、子育てへの根本的な問いを/小﨑恭弘

小﨑恭弘●こざき・やすひろ

大阪教育大学教育学部学校教員養成課程家政教育コース准教授。NPO法人「ファザーリングジャパン」顧問。専門は、保育学・児童福祉・子育て支援。家庭では3児の父であり、それぞれ育児休暇を取得。著書に、『男の子の本当に響く叱り方ほめ方』(すばる舎)などがある。

子育ては誰のものなのか?

小﨑恭弘

今回のテーマである「チーム育児」という子育ての形態は、今後の社会で非常に重要になっていくと私は考えています。

皆さんもご存じのように、以前の日本の社会では、「子育ては母親が1人で行うものだ」といった意識が支配的でした。しかし、そうした子育ての形態はそもそもアンバランスですし、夫婦共働きが一般化した現在では成り立ちにくくなっています。従来の子育て観を見直す必要がある中、子育てをよりよくしていくためには、私たち一人ひとりが「子育ては誰のものなのか」という根本的な問いと向き合うことが欠かせません。「チーム育児」は、その問いに対する答えの1つとして位置づけられます(図1)。

チームとして力を合わせることの重要性を実感

話題提供では、そうした「チーム育児」について多角的に検討する視点が設定されていました。

大久保研究員の発表では、母親が「自分はよい夫婦関係を築いている」と感じることで、母親自身による子育てだけではなく、父親による子育てにもプラスの影響が見られることが述べられ、チームになることの大切さを改めて感じました。また、母親の夫婦関係への満足度には、妊娠期における配偶者からの支えや配偶者とのコミュニケーションが影響しているという指摘も、父親の1人として興味深く受け止めています。

李研究員の発表では、多様な子育てコミュニティと連携した子育てのあり方や、そうした連携と子育て肯定感との関連が示されました。夫婦が、あるいは母親・父親それぞれが、自分に合った子育てコミュニティを探し、それを意識的に活用していくことの重要性を感じました。

父親も子育ての主体になり得る社会を目指して

私は、子育てにおける父親支援の研究に取り組んでいますが、以前の父親には「母親の補助」といった役割が求められることが一般的でした。しかし、真田研究員の発表では、母親から父親への「子育てにかかわってほしい」という願いとともに、父親自身の「子育てにかかわりたい」という思いが強いことが紹介され、子育て観の移り変わりを実感しました。

また、真田研究員の発表では、帰宅時間の遅さなどから、父親が思うように子育てに参加できていないという実態も取り上げられ、職場環境の整備についての示唆がありました。従来の働く母親・父親への支援では、「就労者全体」に手を差し伸べることが意識されがちでしたが、今後は、一人ひとりの働き方に応じた子育て支援のあり方を考える必要があるのではないでしょうか。

2018年度には、男性国家公務員の育児休暇取得率が過去最高となるなど、現在、子育てにおける父親の役割は大きく変わろうとしています。「チーム育児」が普及していけば、ゆくゆくは父親も子育ての主体となり得る社会が実現するでしょう。本調査を通して、そうした社会変革が促されることを期待しています(図2)。


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