教育フォーカス

 

【特集17】学生の学びと成長のプロセスを可視化する
第25回大学教育研究フォーラム 参加者企画セッション 開催報告
2年半の追跡調査に基づくアサーティブプログラム・アサーティブ入試の現状と課題 ~多面的な評価に基づく選抜の効果とは~

第25回大学教育研究フォーラム 参加者企画セッション 開催報告
2年半の追跡調査に基づくアサーティブプログラム・アサーティブ入試の現状と課題 ~多面的な評価に基づく選抜の効果とは~

 

2019年3月23日・24日の2日間にわたり、京都大学において「第25回大学教育研究フォーラム」(主催:京都大学高等教育研究開発推進センター)が開催されました。その企画セッションにおいて、「2年半の追跡調査に基づくアサーティブプログラム・アサーティブ入試の現状と課題 ~ 多面的な評価に基づく選抜の効果とは ~」と題し、追手門学院大学とベネッセ教育総合研究所が共同発表を行いました。

 当日の資料と発表・ディスカッションの概要を、以下に記載します。

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≪プログラム≫

■ 企画趣旨説明  資料 発表内容


ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室 研究員 岡田佐織


■報告1 アサーティブ入試の目的 ~志願者の何を見ているのか?  資料 発表内容


追手門学院大学 アサーティブ研究センター研究員/教務部 アサーティブ課長 志村知美


■報告2 アサーティブ入試の成果と課題  資料 発表内容


ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室長/主席研究員 木村治生


■報告3 入学後の教育改革をどう進めるか?  資料 発表内容


追手門学院大学 副学長 原田 章


■報告4 ポートフォリオ、学生カルテのシステム構築に向けて  資料 発表内容


追手門学院大学 特任副学長 福島 一政


■報告5 教育効果の高い面談を実現するためのアセスメントデータと学生カルテの活用
                                  資料 発表内容


ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室 研究員 岡田佐織


■報告6 総括:キャリア形成・開発の視点を入試という節目にどう仕込むのか
                                  資料 発表内容


追手門学院大学 学長補佐/アサーティブ研究センター長 池田 輝政



※敬称略。所属・肩書きは掲載時点のものです。

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≪発表・ディスカッションの概要≫



■ 企画趣旨説明  資料

ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室 研究員 岡田佐織


本セッションは、アサーティブプログラム、アサーティブ入試の成果と課題について、2年半の追跡調査にもとづいてご報告するものです。追手門学院大学とベネッセ教育総合研究所では、3年間にわたる共同研究の中で、アサーティブプログラム、アサーティブ入試という特色のある育成と選抜の手法をとられている追手門学院大学での取り組みの成果検証を行ってきました。本日は、その検証結果についてご報告するとともに、皆さんと一緒に高大接続の在り方について考えていけたらと考えています。


昨今、高大接続改革において、「主体性をもち、多様な人々と協働しつつ学習する態度」を入学者選抜で評価することが政策として推進されてきています。追手門学院大学では、この方針が出される前から、アサーティブプログラム、アサーティブ入試によって「育成しつつ選抜する」という取り組みをされてきました。この一連の取り組みの成果、そして残されている課題は何かを、データなども含めご紹介しながら、多面的な評価が今後本格的に導入される中で、何がもたらされるのか、どのようなメリットがあり、今後何を乗り越えなくてはいけないのかについて、考えていきたいとの思いで本セッションを企画しました。

多面的に評価せよと言うけれども、何をどうしたらよいのか、多くの大学で困惑されているという声をお聞きします。非常に手間がかかりますので、その手間に見合った効果があるのか、効果があるようにするにはどうしたらいいのか。アサーティブ入試について、様々なところでお耳にされている方もいらっしゃるかと思いますが、結局のところその成果はどうだったのか、ご関心があるのではないでしょうか。また、入学した後はどうするのかということも、課題としてあると思います。その部分を大学としてはどうされようとしているのか、さらには、こういった取り組みを他大学でも実施しようとしたとき、何をどう取り入れることが可能なのかについても、お話ができたらと思っています。


アサーティブプログラムでは、面談の実施に特色があると考えています。(アサーティブプログラムの詳細ついては、去年刊行した報告書のこちらに制度の内容や趣旨等が書いてありますので、そちらをご参照ください。)アサーティブプログラムでは、志願者になるかもしれない、大学に興味をもった高校生に面談に来てもらうのですが、その面談の中で何が行われているのでしょうか。少し先出しする形になりますが、この後のお話をお聞きいただく前ふりとして、外部からみて「こういうことをしているのではないか」という解釈について、説明させていただきます。

アサーティブ面談についてのお話をいろいろ伺う中で感じたのは、<キャリア><学習><納得>という3つの要素を徹底的に高校生に問いかけている、ということでした(シート3)。まず1つ目は、キャリアに関することです。「どのようにあなたは生きていきたいのですか?」「卒業後に何をしたいのですか?」「そのためには大学で何をしたいのですか?」ということを徹底的に問いかけておられます。そして、「そのキャリアビジョンを実現するために、大学では何を学びたいのですか?」「なぜそれ学びたいのですか?」と投げかけておられます。さらに、「なぜそれを追手門学院大学で学ぶのですか?」「ほかの大学ではだめなのですか?」ということを確認されています。この3つが相互にきちんと連動している、結びついているということを確認したうえで、出願してもらうという流れになっています。

ただし、お話を伺っていると、必ずしもこのようにきれいに進むわけではなくて、投げかけても何も出てこない、ということも多々あるのだそうです。そのときに、どう引き出し、本人の中でのキャリア成熟を高めていくのかというところが、単なる選抜ではなく「育成をして受け入れる」という育成型入試の肝になっていると思います。投げかけに対して、言葉が出てこないような場合には、この3つの要素の前後で、「これまでどうだったのか?」「そう考えるなら、これからどういう行動をとるか?」というところを含めて、話を引き出そうとされています。

自己調整学習のプロセスでは、振り返り・見通し・遂行という3つのステップがサイクルとなっていて、新しい学習指導要領のもとでは、このサイクルを自ら回せているかが評価の観点として取り入れられています。追手門学院大学では、このサイクルが志願者の中で本当に回っているのかを、面談の中で徹底的に確認しているのではないかと感じています。これはあくまで、外から見ていての解釈ですので、実際にアサーティブプログラムを運営されてこられた先生方から、実際のところどうだったのかについて、お話を頂く予定です。

本日の構成は、次のようになっています。

まず、最初の話題提供は、「アサーティブ入試の目的」です。志願者の何を実際に見ておられるのか、これまでアサーティブプログラムの設計と担当をされてこられた志村知美先生からお話しいただきます。そして、その入試を経て入学した学生をどう育てるかについて、副学長の原田章先生から「入学後の教育改革をどう進めるか」というタイトルでお話しいただきます。その教育改革の一環として、学生カルテとポートフォリオのシステム構築の話が大学内で進んでいます。教育改革の具体的な施策の一例として、特任副学長の福島一政先生から、大学の次の一手としての「ポートフォリオ・学生カルテのシステム構築」について、お話しいただきます。

本日、我々ベネッセの2名からは、アサーティブの取り組みを外から見てきた立場で、お話しさせていただきます。まず木村治生より、アセスメントデータを使ったアサーティブプログラム、アサーティブ入試の成果と課題について、データ検証の結果をご報告させていただきます。特色のある教育プログラムと入試を経て入学した学生は、他の入試区分で入学した学生とは違った特色を持っていました。経年のパネル調査によって、入学時からの変化を追いかけてきた結果がありますので、それをご報告させていただきます。私(岡田)からは、こういったアセスメントデータ、ポートフォリオや学生カルテといった様々な情報を統合的に活用して、教育効果の高い面談をどのように作っていくことができるかについて、お話しします。共同研究では、プロトタイプとして面談手法を開発するという取り組みを行ってきました。その中から見えてきた、アセスメントデータや学生カルテの使い方について、情報提供をさせていただきます。

そして、最後に、これら一連の取り組みを総括して、共同研究や大学での取り組み全体から得られた示唆や、キャリア形成・開発の視点を入試という節目にどう仕込むのか、これをどう大学教育全体の質向上につなげていくのかについて、学長補佐兼アサーティブ研究センター長の池田輝政先生より、お話しいただく予定です。


なお、アサーティブ施策を推進する部門の組織上の位置づけを、簡単にご説明しておきます。この研究を始めた当時は、アサーティブ課は入試部の中にありましたが、今年度(2019年4月)からは、教務部の下に移りました。教学全体を通して、この理念をどう実現していくのかに取り組むため、部門移管がされています。こういうことができてしまうところが、追手門学院大学のリーダーシップ、マネジメント機能の特筆すべき点ではないかと感じています。


 

 

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