教育フォーカス

【特集7】学校教育におけるICT活用の可能性を考える

[第3回] ICTを活用した協働学習による思考力・表現力の育成  [1/2]

寺嶋浩介先生

寺嶋 浩介●てらしま こうすけ

長崎大学大学院教育学研究科・准教授。 関西大学大学院総合情報学研究科を修了後,京都外国語大学国際言語平和研究所にて研究員として約2年間勤務。 2005年4月より長崎大学教育学部。専門分野は教育方法学(特に教育工学,メディア教育)。テーマとしては,問題解決能力,コミュニケーション能力等の育成に興味がある。 日本教育メディア学会,日本教育工学会,日本教育工学協会理事。主な著書に『タブレット端末で実現する協働的な学び』(フォーラム・A,共編著),『今日から始めるプリンタ&プロジェクター活用授業』(学習研究社,共編著)がある。2009年日本教育工学会研究奨励賞受賞。

■はじめに

文部科学省による教育の情報化ビジョンでは、ICTを活用した協働学習が期待されている。その方向にむけて、こうした考えは学校現場ではどのようにとらえられているか、また今後どう進めていけばよいかなどを今回の調査と関連させて述べる。

■協働学習への期待

今回の調査では、実際に期待されているように、学校現場のサイドにおいても、協働学習が期待されていることが図1からわかった。

一斉学習・個別学習・協働協調学習の割合(現在、今後)(一般校)

図1 一斉学習・個別学習・協働協調学習の割合(現在、今後)(一般校)

ただ、現実としては基礎学力の保障などを考慮すると、理想とする方向に移行させるのは、一筋縄では行かないように見える。協働学習に大きく期待されている点としては、「友だちと協働する力」といったような協働的な問題解決に関するもの、「自分の意見を伝える力」といったような表現力に関するものが、上位にとりあげられている(図2)。近年思考力として求められるような「根拠に基づいて判断する力」や「論理的に考える力」はそれと比べると割合としては低い結果が出ている(図2)。

子どもたちに身につけさせたい力・見についている力(一般校)

※クリックすると拡大します。

図2 子どもたちに身につけさせたい力・身についている力(一般校)

■協働学習とICT活用に対する認識

さて、協働学習においてICTを活用することに関して、教員はどのような認識を持っているだろうか。

ICT活用の効果(一般校)

※クリックすると拡大します。

図3 ICT活用の効果(一般校)

図3からは、授業でのICT活用効果は、一斉授業でのそれに比べて認識されていないといえる。ただし、実施することに対しての希望(図4)を見ると、教材の収集や提示といったものには及ばないが、「プレゼンテーション用のソフトを使って発表する」や、「プレゼンテーション用のソフトを使って子どもが共同で資料をまとめる」などへのICT活用については、半数以上の教員が期待をしている。これは、どちらかと言えば、中学校教員のほうが割合が高い。おそらく、中学校になってくると、もう少し生徒に主導権を与えるような学習が本来は期待されているのではないかと思う。しかし、小学校、中学校とも共通しているが、現在取り組んでいることと、今後取り組みたいことについては、大きな開きがあるということがわかった。

ICTを活用して現在取り組んでいること、今後取り組みたいこと(一般校)

※クリックすると拡大します。

図4 ICTを活用して現在取り組んでいること、今後取り組みたいこと(一般校)

以上のデータを見ると、協働学習や協働学習におけるICT活用は、ひとつの可能性として期待はされているものの、実態としてはまだこれから取り組みを考えていこうとしているというようなことが、改めてデータからも明らかになっていると言えるだろう。

 ページのTOPに戻る

 【特集7】 一覧へ